公認心理師の藤井です。「人前で字を書く時に緊張して手が震え、うまく書けない」という症状を書痙(しょけい)といいます。書痙は社交不安症の症状の一種です。書痙が起きるとこのような困り事が起きます。
書痙で困ってしまう状況
このブログでは書痙改善のポイントや対処を解説していきます。ご紹介する対処法は科学的に効果が実証されている認知行動療法をベースにしたものです。ただ、認知行動療法の説明の前に注意喚起をしたいと思います。
書痙改善で注意してほしい事
書痙でお困りの方は、どの病院に行けばいいのか迷うと思います。社交不安症の症状でもあるので精神科や心療内科に行くのがおすすめです。ただ、注意していただきたいのは身体の病気の可能性も考えられます。もし可能であれば神経内科や内科の受診をお勧めします。身体の病気の可能性が無くなればやはり心理的な問題から生じると考えられます。
それでは、認知行動療法を用いた書痙の対処お伝えします。この記事を読めば書痙の改善方法を知ることができます。
目次
まず、どのような手順で進めるかを最初にご紹介します。①から③は事前準備です。手が震える状況やその時の考えを分析し、実際にチャレンジする計画を立てます。このような事前準備が終わった後に実際の場面にチャレンジしていきます。チャレンジのことを行動実験と呼びます。
まずはどのような場面で書痙が起きるかを分析します。書痙の場合、常に起きているわけではありません。特定の場面があるはずです。そして緊張を伴うような場面が多いです。もし、緊張や場面に関係なく書痙が起こるようでしたら身体の病気の可能性が高いです。内科や神経内科を受診してみてください。分析のポイントは以下の通りです。
このように図示します。図示すると漠然と困っていた問題が明確になってきます。ただ、いきなり一人で最初に図示していくのは難しいです。カウンセラーと一緒にやることをおすすめします。ちなみに青い枠でくくってあるのが書痙が起きた時の行動になります。もしこの行動が不安や緊張を減らすためにやっているとしたら安全行動と呼ばれるものかもしれません。安全行動はチャレンジの段階で再び出てくる重要なキーワードです。後ほどご説明します。
認知行動モデルは1つの場面ですが、今度は書痙で困っている様々な場面をランキング化していきます。ランキング化した表を不安階層表と呼びます。
このように図示していきます。書痙が起きる状況を複数上げていき、それに点数をつけてランキングの表を作成する。このような理解で大丈夫です。実際にチャレンジをしていくのは点数が低い状況からスタートします。時々点数の高い所からチャレンジしてしまう人が居ますがそれは要注意です。そういう方法もあるにはあるのですが専門家と相談しながら進めてください。
不安階層表を作成したら、チャレンジする場面を決めます。例えば「家族と一緒にホテルにチェックインしたときに自分で名前や住所を書く」などです。このように実際の場面にチャレンジすることを認知行動療法では行動実験とと呼びます。大事な言葉なので改めて説明します。
頭の中で考えている心配なことやネガティブな予測が本当にそうなるのかを確認する手続きです。認知行動療法の方法の一つです。実験なので実験結果の予測、実験計画を立てることが事前準備で必要です。行動実験をどう計画するかを次から説明します。
まずチャレンジする場面を決めます。先ほど述べたように「家族と一緒にホテルにチェックインしたときに自分で名前や住所を書く」という場面にチャレンジするとします。ではどんなことが起きるか予測をします。予測の例を挙げてみました。
このような感じで予測を立てましょう。大事なのは「書痙が起きた後にどういう展開になるか」まで予測してみることです。
予測を立てた後は安全行動を振り返ります。安全行動という大事なキーワードが出てきました。改めて説明します。
あがり症(社交不安障害・社交不安症)の人が頻繁にしてしまう行動です。安全行動とは不安や緊張を減らそうとする行動のことになります。この行動が不安を慢性化させます。
書痙が起こりそうななったらどんな安全行動をしてしまうを思い出します。例えば書痙の人の安全行動は以下のようなものです。典型例を挙げてみました。
安全行動を把握したら、それとは真逆の行動を増やします。例えばこのような感じです。
このように感じです。行動実験する日時、何が起きるかを予測、安全行動、安全行動とは逆の行動などを決めていきます。ここまでが行動実験の計画です。実際のカウンセリングではワークシートにそれぞれ記入していきます。記入例は以下の通りです。
このようなワークシートを使って行動実験の計画を立てます。ただ、いきなりこんな風に作れません。完璧を目指さす作っていただければ大丈夫です。また不安40点の場面を記載していますが実際は10点とか0点とかもっと低い所から始める場合もあります。安全行動も1つ1つ減らしていくのが大事です。
事前準備も終わったので実際の場面に行動実験していきます。
書痙が気になる方は、気になる場面を分析してみましょう。その上で不安階層表を作成し取り組みやすい所から行動実験をしていってください。「書痙に囚われない」ことを目指すのが大事です。書痙を無くそう無くそうと意識すると結局囚われてしまいます。忘れないで頂きたいのは、行動実験の際は安全行動を徐々に減らしていってください。やり方がわからない方は自己流でやらずに相談してくださいね。
最後に宣伝です。kiyokiyo(きよきよ)は、社交不安障害(スピーチ恐怖症・社会不安症・あがり症・対人恐怖症)を専門とした心理カウンセリングルームです。公認心理師・臨床心理士が運営しております。
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この記事の筆者
公認心理師・臨床心理士。社交不安症(障害)の認知行動療法を専門とする。首都圏の精神科病院、カウンセリングルーム、メンタルクリニックにてカウンセリング、復職支援、心理検査等を担当。