公認心理師の藤井です。プレゼンでこんな経験したことありませんか?
まず「緊張しない方法」はありません。緊張は人間にとって必要な感情なので、ゼロにはなりません。緊張という感情が無くなれば生活に支障が起きますよね。緊張がゼロになれば仕事の用意、試験勉強、安全運転などの行動をしなくなります。
現実的には「緊張しない方法」を追求するよりも、「緊張にうまく対応する方法」を考えたほうが良いでしょう。この記事は、緊張が起きてしまう原因をお伝えします。さらに科学的に効果の実証された効果的な緊張への対処法を3つお伝えします。
目次
緊張の原因は大きく2種類に分けることが出来ます。体の興奮と否定的な考えです。
心理学では体の興奮のことを「生理的覚醒」と言います。具体的にはこんな現象です。
不安や緊張が活性化すると、交感神経系が活発になります。そうするとこのような体の興奮が起きやすくなるのです。交感神経系が活発になるので普段よりも大事な場面で頑張れることになります。言い換えると臨戦態勢になれるわけです。
逆に臨戦態勢を取れずダラダラしたプレゼンになると迫力も無いです。緊張はしないものの、プレゼンは不調に終わっては仕方ありません。
この体の興奮を「うわ!緊張してきた!やばい」とネガティブに解釈するため緊張に苦しみすぎてしまいます。体の興奮はあくまでも生理現象です。体の興奮が起きたら「自分は臨戦態勢になっている。これは自然なこと」と解釈するのが大事です。
「失敗する かも しれ ない」 といった 否定的 な 考え を心理学では「認知的不安」 と いい ます。 プレゼン前は認知的不安が活発になります。認知的不安が活発になると「失敗するに違いない」という予測を何度も考えることになります。
その結果、不安が強まり課題に集中できないまま、時間を過ごすという流れになってしまいます。否定的な考えが強まれば強まるほど、普段の実力が出しにくくなります。
緊張にうまく対処するには
この二つをコントロールするのが大事です。3つのコントロールをお伝えします。
緊張するプレゼンやスピーチが近づけば、心臓のドキドキが強まったり、呼吸が早くなります。「普段よりもドキドキしているな」「いつもり、身体に力が入りすぎている」と自覚する時があります。まずこういう自覚が生じたら体の興奮(生理的覚醒)が起きている証拠です。体をリラックスさせ、興奮を減らしましょう。減らし方はは2つ。呼吸法と筋弛緩法です。
呼吸法の手順
深呼吸で呼吸を落ち着かせたら、次は緊張した筋肉をほぐしましょう。これには「漸進的筋弛緩法」という方法が効果的です。難しそうですが、特別な用意や動作は必要ありません。
次の手順に従って実践してください。
1から13までありますが、「体の各部分に力を入れて、一気に緩める」と覚えていただければ十分です。漸進的弛緩法は筋肉の緊張状態をほぐすだけではなく、心理的緊張も低下させます。1から13の1セットは数分で終わりますが、より効果を得るためには20分から30分くらい繰り返し行うのをお勧めします。
また、心理臨床学会が筋弛緩法の手順を分かりやすく図示しています。文章は分かりにくいなあという方はこちらをご参照ください。
特設ホームページ(ストレスマネジメント技法集) | 一般社団法人 日本心理臨床学会 (ajcp.info)
筋弛緩法という部分をクリックしてください。詳しいイラストが掲載されています。
体の興奮(生理的覚醒)については、呼吸法や漸進筋弛緩法が効果的です。ただ、頭の中でよぎるプレゼンに対する否定的な不安(認知的不安)には別の一工夫必要です。プレゼンについて些細なことが気になったり、失敗する未来がよぎったりなどしますよね。
厄介なのは、時間がある時に浮かんだり、浮かんで来たらそのことで頭がいっぱいになります。否定的な考えを消そうとしても、滅多にうまくいきません。「否定的な考えを消そう」「否定的な考えを消すにはどうしたらいいか」と考えている時点で消えていないのです。
否定的な考えが浮かんで来たら、「またいつのもあれか」ぐらいに捉えてそのままにしてください。そして出来るだけ別の行動をするようにしてください。別の行動の候補としては、
こんなのがおススメです。できるだけ、集中できて、やりながら夢中になることが良いです。個人事業主の方は確定申告の準備なども良いでしょう。確定申告の準備は集中しないとできないですしね。否定的な考えが浮かんだら、そのことを考えるのではなく暫くは集中できることをやり続けてみてください。
「緊張しない方法」は様々ありますし、それ類する情報も多くあります。ただ決定的な方法はありません。緊張という感情はゼロにならないので当然です。緊張が無ければダラダラしてそもそもプレゼンのパフォーマンスも上がりません。ある程度の緊張は必要です。
ただし、「緊張しすぎ」は困りものです。パフォーマンスを下げます。緊張は体の興奮(生理的覚醒)と否定的な考え(認知的不安)によって起きます。緊張対策としてはそれぞれにアプローチしていけばいいのです。
最後に宣伝です。kiyokiyo(きよきよ)は、社交不安障害(スピーチ恐怖症・社会不安症・あがり症・対人恐怖症)を専門とした心理カウンセリングルームです。公認心理師・臨床心理士が運営しております。
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この記事の筆者
公認心理師・臨床心理士。社交不安症(障害)の認知行動療法を専門とする。首都圏の精神科病院、カウンセリングルーム、メンタルクリニックにてカウンセリング、復職支援、心理検査等を担当。