「人前で話したり発表したりするのが極度に緊張する・怖い」と思っていたり、悩んでいたりしませんか?そのようなお悩みを「スピーチ恐怖症」ともいいます。そしてスピーチ恐怖の克服には認知行動療法がおすすめです。
そこで今回は、スピーチ恐怖(症)に特化した認知行動療法について、国家資格の公認心理師をもっている私がご紹介していきます。
この記事を読めば、「スピーチ恐怖症」への対策を知ることができます。
目次
認知行動療法がおすすめな理由としては、科学的に効果が実証されているためです。認知行動療法とは「こころの不調につながっている考え方の行動パターンの偏りを軽減し、パランスをよくして、それによりこころの不調を改善していくもの」です。
科学的に効果が実証されている認知行動療法だからこそ、他の克服方法と比べて、安全に効率よく克服することが期待できます。
とはいえ、認知行動療法って具体的に何をするのかほとんど知られておりません。そこで、今回は「スピーチ恐怖症」克服のための認知行動療法のステップを今回は私の実体験をもとに、できるだけ具体的にご紹介します。
認知行動療法の大まかなステップは以下とおりです。
実際のスピーチ場面を予測してみることで、事前にスピーチ恐怖を高めてしまうような考え方や行動パターンに気づく。そしてスピーチ後に結果を振り返ることで、考え方や行動パターンの偏りを軽減させ、バランスをよくしていきます。
まずは実際にスピーチをする場面を決めます。場面設定を明確にしておくと自身の考え方や行動パターンに気づくことができ、個別の対策が立てやすいからです。
今回、私が選んだ場面は「長年、嫌いなので話してこなかったおじさんの家で、重要な話をする。話のテーマは家族の重大事」です。
家族についての重要なことをおじさんに説明かつ報告する、つまりスピーチする必要ができてしまいました。
場面が決まったら、その場面でスピーチすると起きるだろうことを予測します。予測は頭の中で浮かぶ仮説です。
認知行動療法は頭の中の仮説(認知・考え)が実際に起きるかどうかを検証する手続きなのですが、仮説を立てると検証しやすくなります。
私はこのような予測を立ててみました。
予測を立てるときはこれくらい細かさでOKです。場面を決め、その場面での予測も立てました。実際にチャレンジするには、もうひと工夫が必要です。何をするかというと、「不安を下げるような行動を減らす」というものです。
不安を下げる行動を心理学では「安全行動」といいます。別名、「安全確保行動」「安全保障行動」などの呼び名があります。自分の気持ちを安心させ、不安を減らすような行動を全般を指している、と考えていただければ十分です。
代表的な安全行動は「相手と視線を合わせず下を向く」「早口でまくしたてるように話す」「変なことを話したのではないかとクヨクヨ考える」などがあげられます。
安全行動は一時的に不安なことを避けているだけです。長い目でみるとスピーチ恐怖(社交不安症)を悪化、慢性化させます。安全行動を続けるとそれにとらわれて周囲の様子を観察できなくなります。そうするとステップ2で立てた予測を訂正する機会が失われてしまうのです。
おじさんの場面で私がやってしまいそうな安全行動ですが、このような行動を挙げてみました。
安全行動に対して、別の行動を考えてみました。
安全行動を減らし、別の行動を増やす。つまり行動パターンの偏りを軽減させます。
いよいよ実際の場面にチャレンジ。
今までの要約ですが・・・
実際にやってみました!
最後にチャレンジした結果を振り返ります。予測と実際の差を振り返ることで、考え方の偏りを軽減させ、バランスをよくしていきます。
現実に起きていないことは省いて、実際に起きたことを振り返ろう
結論から言うと予測はすべて外れました。心配していたことは何も起きなかったのです。
実際には起きたのは以下の通りです。
後日談ですが、おじさんは「彼はあんなにしゃべる人間だったのか」と驚いていたそうです。今回の認知行動療法を使ったプログラムで、親戚とうまく話せてホッとした自分がいます。嫌いな感情は変わりませんが、今後はもう少し楽に付き合えそうです。
「スピーチ恐怖症」の方は、今回の「大声を出す。長く話す」のようにわざと視線を集めるようなチャレンジがおすすめです。何度もチャレンジすることでスピーチ恐怖は改善していきます。筋トレと同じ要領なのです。
最後に宣伝です。kiyokiyo(きよきよ)は、社交不安障害(スピーチ恐怖症・社会不安症・あがり症・対人恐怖症)を専門とした心理カウンセリングルームです。公認心理師・臨床心理士が運営しております。
認知行動療法やLINE・Zoomでのカウンセリングを提供しておりますので、もし専門家のサポートが必要な方はカウンセラープロフィールやメニューをご確認の上、ご利用案内に沿ってお問い合わせください。
この記事の筆者
公認心理師・臨床心理士。社交不安症(障害)の認知行動療法を専門とする。首都圏の精神科病院、カウンセリングルーム、メンタルクリニックにてカウンセリング、復職支援、心理検査等を担当。