公認心理師の藤井です。対人恐怖症(社交不安症、社交不安障害)の人で「特定の人だけ怖い」という悩みを持つ方結構おられます。すべての人が怖いのではなく、特定の人に接する時だけ恐怖が生じてしまうのです。例えばこのような感じです。
「特定の人が怖い」の例
このような悩みがあると職場、学校、その他属しているコミュニティ等で不都合が生じるのです。具体的には特定の場面を避けたり、特定の役割を受けるのに躊躇したりなど不利益も生じます。特に職場でこのような悩みがあると諸々影響が出ます。もし「特定の人」が上司になれば仕事に滞りも生じます。
ちなみに対人恐怖症には認知行動療法が有効です。この記事では、認知行動療法の方法(不安階層表、行動実験)をベースにこのようなお悩みについて対処法を解説していきます。この記事を読むと「職場や学校で特定の人が怖い」という悩みへの対処法を知ることが出来ます。 対処法は5つのステップで構成されています。順番に説明していきます。
目次
「ある特定の人」が怖いわけですが、一体その人のどんな特徴が怖いか、怖い理由を振り返りましょう。特徴のまとめ方は以下の通りです。
こんな感じです。これだけでは分かりにくいと思うので例をお伝えします。私の例です。私は以前勤務していた精神科の病院で「怖い人」がいました。このような感じにまとめてみました。
このように具体的に考えることで、色々な気づきを得ることが出来ます。まず私は「そもそも怖い思いをしたことがなかった」ということに気付きました。漠然と怖いと思っていただけでは、このような気づきは得られません。怖い経験をリアルにしたことはないのです。
いきなり不安階層表とか安全行動とか知らない言葉が出てきましたね。それぞれ解説していきます。
どんな行動をすると不安が強くなるかをリスト化した表です。不安の度合いに点数をつけ、点数は100点満点です。不安が高いほど点数は高くなります。実際にやったことが無いこともリストに加えても大丈夫です。
【不安階層表の例】※職場の人間関係が不安な人の場合 横の点数は不安の高さ
対人恐怖症が起きると人と目を合わせることを避けて下を向いてしまうなど、対人不安が生じる場面を避けたり、できるだけ不安を感じないように行動してしまいます。こうした行動を「安全行動」といいます。典型例は下記の通りです。
【安全行動の典型例】
このような感じです。まず、「特定の人」の怖い特徴をまとめた後は、その人関わる場面を思い浮かべてください。その場面を不安階層表に記載する。次にその場面で不安を感じないように自分を安心させている行動をしていないか。振り返ってみましょう。それが安全行動です。例えば私ならこのようになります。先ほどの作業療法士さんの例です。
先ほど書いたように病院に勤務していた時に同僚の作業療法士が苦手でした。その時を思い出して不安階層表と安全行動を記載してみました。
【不安階層表】男性作業療法士さんと関わる場面
このような感じです。安全行動はこのような感じです。
【安全行動】
最初はこんなに何項目を作らなくても大丈夫です。安全行動も不安階層表も2~3個(項目)から作り始めていきましょう。不安階層表の点数ですが最初は大雑把で十分です。点数は固定ではなく実際に取り組む中で変化していきます。まずは大まかに作ることを目指していきましょう。不安階層表の点数も順番もやっていくうちに変わっていきます。
不安階層表や安全行動をリスト化したら行動実験となります。また新しい言葉出てきました。
対人恐怖症の人は最悪な事態を予想しがちです。最悪な予想は当たるのか、当たらないのを確認していくことが対人恐怖症改善にはとても重要なことです。そのためには実験形式を経験していくことが必要です。この実験では、実験前に予測を立てたり、具体的な実験の手続きを決めていきます。これらの方法を認知行動療法では行動実験と呼びます。
まず行動実験は事前に予測を立てます。予測にはネガティブなことを書くと良いでしょう。「ひょっとしたら最悪こうなるかもしれない」と心配していることを書いてみましょう。記入例は以下の通りです。行動実験の前には実験場所や実験の日時、内容、実験前の予想、心得を記載しましょう。
いよいよ行動実験の開始です。実際に行動実験する時は、不安階層表の点数の低いところからチャレンジしましょう。とても心配な方は0点の場面から始めても大丈夫です。思い切ってやってみたいかたは点数の40~50くらいから始めてもいいでしょう。ただ大事なのは1回で終わらせるのではなく何度もチャレンジすることです。そして、安全行動をしないことが大事です。
記入例では「遠くに座る」「話しかけないようにする」という安全行動を止めてみました。その代わりに「近くで座る」「話しかけてみる」という行動を試してみました。実際にどうなったかを実験結果やまとめに記入していきます。
実験をした後は、実験結果を振り返ってみましょう。例題のように
このような心配なことが実際に起きたか、別の展開になったかを確認してみるのが大事です。振り返った内容は記入例の右端に記入します。記入例を見ますと実際にそのようなことは起きませんでした。多くの場合、このように事前の予想通りになることは滅多にありません。思いがけない展開になり、自分の予測とはズレてしまうことがあります。自分の頭の中の予想はその通りにならず、外れるという経験をするのが行動実験ではとても重要です。1回で終わらせるのではなく、何回も色んな場面で行動実験をすると効果的です。
「対人恐怖症を改善したい」という方にお勧めなのがkiyokiyoの改善プログラムです。今回ご紹介した「対人恐怖症にやってほしいこと」を認知行動療法に沿って計画的にしっかりやっていくプログラムです。担当するのは臨床心理士と公認心理師の資格を持ったカウンセラーです。
kiyokiyoの公式LINEをフォローいただければ、無料相談もご案内しております。ぜひご活用ください。
特定の人が怖い場合の対処法を説明しました。5つのステップが重要です。
まずは安全行動を見つけ、それを減らしつつ、あえて不安になるような行動を増やすのが大事です。ただ気を付けていただきたいのは、少しずつかつできそうなところから取り組んでいきましょう。やり方が分からない人は自己流でやらずに相談してください。
最後に宣伝です。kiyokiyo(きよきよ)は、社交不安障害(スピーチ恐怖症・社会不安症・あがり症・対人恐怖症)を専門とした心理カウンセリングルームです。公認心理師・臨床心理士が運営しております。
認知行動療法やLINE・Zoomでのカウンセリングを提供しておりますので、もし専門家のサポートが必要な方はカウンセラープロフィールやメニューをご確認の上、ご利用案内に沿ってお問い合わせください。
この記事の筆者
公認心理師・臨床心理士。社交不安症(障害)の認知行動療法を専門とする。首都圏の精神科病院、カウンセリングルーム、メンタルクリニックにてカウンセリング、復職支援、心理検査等を担当。