【赤面症】治し方の６手順を詳しく解説　

公開日:2024/02/12最終更新日:2024/02/12

公認心理師の藤井です。社交不安症（あがり症・対人恐怖症・社交不安症）の人で「赤面症で困っている」という悩みを持つ人が多いです。赤面症について簡単に説明します。

赤面症とは？

• 社交不安症（障害）の一種です。
• 人前で顔が赤くなるのが怖く、かつ赤面を指摘されるのではないか心配する状態のことです。
• 顔が赤くなるのが怖いので人と話すを避けたり、話したとしても距離を置くようになってしまいます。
• その結果対人関係が乏しくなったり、常に緊張状態が続き疲弊します。
• 周りに相談しても「気にしすぎ」と言われるだけ相手されません。

この赤面症とですが、突然なるわけではありません。ケースバイケースでありますが発症するきっかけみたいなものがあります。

赤面症になるきっかけ

• 学生時代、同級生の前で発表したときに緊張した。その際に顔が赤いことを指摘される。
• 体育の授業で運動した後は顔が真っ赤になる。そのことを同級生から指摘される。

上記のエピソードは１回だけという場合も多いです。１回しか指摘されていないわけですが、この１回が大きなインパクトなのです。つまり１回の指摘でも相当ショックな出来事なのです。

このような状態が続けば仕事や生活に支障が生じます。誰かと話したり、何かを発表する際に「赤面がバレたらどうしよう？」と心配になり、常に不安や恐怖に苦しむというケースも多いです。

赤面症には認知行動療法が有効です。認知行動療法の考えをベースに対処方法を解説していきます。対処法は６つの手順で構成されています。順番に説明していきます。

手順①対策を練るために赤面症を分析する。

分析モデル①　赤面症が起きている状況を分析

まずは赤面症について調べます。赤面症が起きた状況について分析します。分析には認知行動療法のモデルを使用します。分析することで自分が困っている問題を客観視できますし、どこから改善していけばいいか把握しやすくなります。分析のポイントは以下の通りです。

分析のポイント

• 分析は具体的であればあるほど有効ですが、慣れないうちは抽象的でも大丈夫です。まずは最近赤面症が起きた場面を取り上げましょう。起きそうになった場面でもOKです。具体的な分析内容は以下の５点です。
  • ①赤面症が起きた日時と状況
  • ②その時浮かんだ考え
  • ③自分は周りにどう見えているか（否定的な姿）
  • ④不安や恐怖を解消するためにどんな行動をしていたか。安全行動とも言います。
  • ⑤その時の症状や感情
• 分析モデルを図示していきます。下記にモデルの例があります。安全行動という専門用語が出てきました。安全行動についてはこちらで詳しく説明しています。

分析モデルの例

分析モデル②　赤面症が起きている悪循環を分析

赤面症の場合はもう一つの分析を加えるとさらに効果的です。新たに何かをするわけではありません。上記モデルで明らかになった①、②、④を利用します。赤面症が起きている時の悪循環を分析します。赤面症が起きている時に何を考え、どんな安全行動を繰り返しているかを振り返ります。分析例は以下の通りです。

分析モデルの例

悪循環をモデル化する理由

• 安全行動は赤面症に伴う不安や恐怖を一時的に解消します。
• 解消はするものの、長期的にみると赤面や顔に関するこだわりが強化されてしまいます。
• 強化の結果、安全行動は増えます。結局安全行動が赤面症悪化の要因となっているのです。この悪循環を明確にするのがモデル化の目的です。
• 赤面症を改善するには、安全行動を減らす練習が必要です。コツコツ練習をすると赤面に関するこだわりが楽になってきます。

2つのモデルを作成したら次は不安階層表を作成します。

手順②苦手な場面を洗い出す。不安階層表の作成

　不安階層表という専門用語が出てきました。解説します。

②-1【不安階層表とは？】

どんな行動をすると不安が強くなるかをリスト化した表です。不安の度合いに点数をつけ、点数は100点満点です。不安が高いほど点数は高くなります。実際にやったことが無いこともリストに加えても大丈夫です。不安のランキング表と思っていただければ大丈夫です。

不安階層表作成の目的とポイント

• 赤面症で困る場面をランキング化し、点数の低い場面からチャレンジしていきます。
• ランキング化や点数の低い場面を洗い出すために不安階層表を作成します。
• 赤面症が起きた場面をたくさん思い出してください。
• 最近の出来事から思い出すと書きやすいです。
• 場面を思い出したら各場面でどれくらい不安が高かったかを点数をつけましょう。
• 100満点で点数化していきます。0が不安が最も低く、100は不安が最も高い状態です。
• 点数は大雑把でも大丈夫です。不安階層表の例は下記の通りです。

②‐2【不安階層表の例】※赤面症の場合

手順③安全行動を突き止める。

不安階層表を作成したら、次は安全行動です。不安階層表でランキング化した場面でどんな安全行動をしているか調べてみましょう。いきなり安全行動という専門用語が出てきました。解説します。

③-1【安全行動とは？】

安全行動とは不安や緊張を減らそうとする行動のことになります。この行動が不安や恐怖を慢性化させます。赤面症の場合、以下のような安全行動をやりがちです。

【赤面症の安全行動の典型例】

• 赤面がばれないように下を向いて歩く。
• 相手と話すときはマスクをつける。感染予防と言い訳をする。
• 相手と話すときは正面に座ると赤面がバレそうなので、斜めにすわる。
• 顔に注目が集まらないように薄めのメイクをする。
• 髪型はロングにする。短くすると赤面がバレそうで怖い。

実際のカウンセリングでは、このような安全行動をカウンセラーと一緒に探していきます。探し方のポイントとしては以下の通りです。

③-２【安全行動を探すポイント】

【探し方のポイントやコツ】※下記のような行動であれば安全行動の可能性が高い。

• リラックスしている自分が普段やっていない行動
• 不安や恐怖を下げるためにやっている行動
• 不安や恐怖を隠そうと頑張っている行動
• 普段の自分らしくない行動

手順④【事前準備】行動実験の計画を立てる。

安全行動が明確になったらいよいよ行動実験となります。不安階層表に掲載されている実際の場面にチャレンジします。例えば不安階層表に書いてある「職場の同僚と真正面で、かしこまった話をする時」という状況にチャレンジするとします。このように実際の場面にチャレンジすることを認知行動療法では行動実験と呼びます。大事なキーワードなので改めて説明します

④-1【行動実験とは？】

頭の中で考えている心配なことやネガティブな予測が本当にそうなるのかを確認する手続きです。認知行動療法の方法の一つです。行動実験の手続きを説明していきます。

④-2【行動実験】まずは予測する。

　行動実験をする場面は、先ほど述べたように「職場の同僚と真正面で、かしこまった話をする時」です。まずはどんなことが起きるか予測をします。予測の例を挙げてみました。

行動実験したらどうなるか予測した例

• 顔が赤いことを上司に気付かれる。笑われてしまうと思う。
• 顔が赤いことがバレるので、気持ちが悪いと思われる。
• 「顔が真っ赤だけど熱があるんじゃないの？」と言われる。熱があるのに職場に出勤するなんて無責任と思われる。
• 以上のような一連の出来事で自分の評価は落ちる。

赤面症の人は最悪な事態を予測してします。悪い方へシミュレーションしてしまうのです。このシミュレーションが当たるのか、当たらないのかを確認することが行動実験のポイントです。実際のカウンセリングでは下記のようなシートを使って記載していきます。

④-3【行動実験】減らす安全行動を決める。

予測を書いたら次はいつもやってしまっている安全行動を書き出します。そして減らしやすい安全行動を特定していきます。減らす安全行動が決まったら、あえて逆の行動にチャレンジしてみましょう。例えば、斜めから話すのであればその逆の正面から話す。髪で顔を隠しながら話すのであれば、隠さず話す。このような感じです。

④-4【行動実験の準備のポイント】

• 実験をする日時や場所はできるだけ具体的な方が取り組みやすいです。
• 実験前の予想は多ければ多いほど良いです。
• 不安階層表の不安の点数が低い状況から開始すると取り組みやすいです。
• 安全行動は少しずつ減らしていきましょう。1つの実験で１つか２つの安全行動を減らすのが目安です。
• 事前準備の記載例は以下の通りです。例では安全行動を3つ減らすことにチャレンジしていますが、最初は１個くらいで十分です。

手順⑤【行動実験開始】赤面症と向き合う。

いよいよ行動実験開始です。実際の行動実験では心配なことも多いと思います。とても心配な方は不安階層表の一番下の場面。つまり不安が一番低いところから実験してみましょう。そこも怖い場合は不安がほとんど感じない場面から実験してみてください。大事なのは1回で終わらせるのではなく何度もチャレンジすることです。そして、安全行動をしないことが大事です。コツコツと「安全行動をしない」を繰り返すのが大事です。行動実験を終えたら結果をシートに記載していきます。記載例は下記のとおりです。こちらもカウンセリングでカウンセラーと一緒に作成していきます。

手順⑥【行動実験終了】どのように立ち向かったかを振り返る。

実験をした後は、実験結果を振り返ってみましょう。予測の通りになったかどうかを確認するのが重要です。振り返った内容は記入例の右端に記入します。記入例を見てください。

記入例を見ますと実際にそのようなことは起きませんでした。多くの場合、このように事前の予想通りになることは滅多にありません。大切なのは「予測通りにはならなかった」という経験を何回もすることです。今後、同じような予測をしても「あの時は外れたよなあ」という考え直す材料になります。頭の中の予測は仮想現実ですが、実際の行動実験はリアルな経験なわけです。リアルな経験で仮想現実を打破しましょう。そうすれば赤面症も改善していきます。

まとめ

　視線恐怖症の対処法を説明しました。６つの手順が重要です。

1. 赤面症の状況と悪循環を分析する。
2. 不安階層表を作成する。
3. 安全行動を明確にする。
4. 行動実験の準備（事前に予測、実験の中身を決める。）
5. 行動実験を実施
6. 行動実験の振り返り

少しずつ、できそうなところから取り組んでいきましょう。やり方が分からない人は自己流でやらずに相談してください。

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