公認心理師の藤井です。社交不安症は「あがり症」「社交不安障害」「対人恐怖症」と呼ぶ場合もあります。この記事では社交不安症の概要とカウンセリングの方法、治療について解説します。この記事で分かるポイントは以下の通りです。
【この記事で分かること】
それでは具体的内容について紹介します。
目次
社交不安症(SAD=social anxiety disorder)は不安症の一種です。心の病気の一つです。社交不安症の特徴は「他人から注目されるのが怖いし、交流するのも怖い」になります。注目されて緊張してしまうのは当然のことです。怖いだけではなく、注目されそうな場面や交流自体を避けるようになってしまう場合があります。社交不安症について詳しく解説していきます。
社交不安症の人が苦手な場面はいくつかあります。主な場面は以下の通りです。
上記はあくまでも一部です。他にもたくさんあります。誤解しないでいただきたいのは、社交不安症の人は「注目されたくない。他人から交流したくない」と思っているわけではありません。注目や交流されることで恥をかくのを極度に恐れているのです。恥をかいて否定的な評価を下されるのを心配しています。このような心の動きを図解してみました。
社交不安症の人はこの図のような葛藤でいつも悩んでいます。社交不安症の症状は多岐にわたります。代表的な症状をお伝えします。
代表的な症状
これはみんな心の中の症状です。しかし社交不安症は身体にも症状が出てしまう場合があります。
社交不安症は心の病気です。ところが身体にも症状が起きます。安心していただきたいのは「社交不安症の身体症状(少し変な言い方ですが)」は心配するような身体の病気ではありません。しかし社交不安症の人自身はすごくすごく気にしてしまうのです。
代表的な身体の症状 ※深刻な身体の病気の可能性は低い。
社交不安症の中でもあがり症の人は「動悸」「喉のつまり感」、書痙の人は「手足の震え」のような症状に悩むことが多いです。ところが、このような症状は周囲の人間はほとんど気にしていません。ほとんどの場合気づかれないのです。この落差をいくら指摘されても「そうはいっても悩んでいるのだ。」と落ち込んでしまうのです。
不安になるのは普通です。私も頻繁に不安になります。この「普通の不安」と「社交不安症」はどう違うのでしょうか。要約すると
となります。人が不安を感じるのは当たり前なことです。生きていくには不安は必要な感情です。不安があるので、危険予知が出来ますしトラブルを未然に防ぐことが出来ます。ところがその不安が常時高い状態であるとどうでしょうか。日常生活が困難になります。社交不安症と普通の不安の違いを図解しました。
社交不安症の治療の目標を「不安をゼロにする」にするのはお勧めしません。不安があるから危険や心配なことにあらかじめ対処できますし、リスクマネジメントもできるわけです。社交不安症の治療やカウンセリングでは以下のことを目標にします。
社交不安症治療(克服)が目指すゴール
不安ゼロよりも不安による生活上の困りごとを減らす。こちらに力を注ぐイメージです。では社交不安症の治療やカウンセリングにはどのようなものがあるか説明します。
社交不安症の治療法、克服法を説明していきます。
病院に行くという選択です。とはいえ、何科を受診すればいいのか迷いますよね。詳しく解説していきます。まず精神科(精神神経科)、心療内科、メンタルヘルス科といった名称の病院に受診しましょう。社交不安症を治療対象にしています。次にメンタルクリニック行くか、大きな病院に行くかですがやはり迷いますよね。図解しました。
次に薬ですが社交不安症の場合は抗うつ薬と抗不安薬が処方されます。「不安症なのにうつ病の薬?」と疑問に思いますよね。抗うつ薬も様々な種類があり、不安を和らげる効果があります。薬の服用に関してはぜひ医師の指示に従ってください。自分の判断で止めたり多めに飲むのは絶対にやめてください。そして「薬を飲みたくない」という思いがあるなら医師に率直に話してみましょう。その時、真摯に答えてくれるお医者さんは良いお医者さんです。過去のブログで精神科に受診する際のポイントをまとめています。
森田療法というカウンセリングの方法があります。これは日本で生まれたカウンセリングです。戦前からあります。森田正馬さんという精神科医が開発しました。森田療法のポイントをまとめました。
認知行動療法という方法もあります。これもカウンセリングです。社交不安症改善の効果が立証されている方法になります。具体的な方法は厚労省がマニュアルを作成しています(専門家向けなので読み易くはないです)。マニュアルはこちらです。認知行動療法のポイントをまとめました。
具体的な認知行動療法の進め方ですが、こちらのブログで紹介しています。1つ目は社交不安症の一種であるスピーチ恐怖症について私自身が実践した内容です。非常に不安を感じるで認知行動療法を試しました。2つ目は社交不安症(あがり症)で「緊張で声が震える」というケースへの認知行動療法の具体例です。
社交不安症について解説しました。社交不安症はジワジワと日常生活を影響を与えます。最悪、引きこもりや不本意な転職(退職)に発展します。この病気は具体的な解決方法が開発されています。今回のブログで紹介した内容です。どんな病気にも共通して言えることですが、早めに手を打つのが一番大事です。ちなみにカウンセリングルームkiyokiyoは特に認知行動療法に特化したカウンセリングを行っています。
【参考文献】
最後に宣伝です。kiyokiyo(きよきよ)は、社交不安症(あがり症・対人恐怖症)を専門とした心理カウンセリングルームです。公認心理師・臨床心理士が運営しております。
認知行動療法やLINE・Zoomでのカウンセリングを提供しておりますので、もし専門家のサポートが必要な方はカウンセラープロフィールやメニューをご確認の上、ご利用案内に沿ってお問い合わせください。
この記事の筆者
公認心理師・臨床心理士。社交不安症(障害)の認知行動療法を専門とする。首都圏の精神科病院、カウンセリングルーム、メンタルクリニックにてカウンセリング、復職支援、心理検査等を担当。