公認心理師の藤井です。対人恐怖症の方、こんなお悩み持っていませんか?
今回、このようなお悩み関して克服方法をお伝えします。ご紹介する克服方法は認知行動療法の考え方をベースにしたものです。認知行動療法はあがり症(対人恐怖症・社交不安症)克服に有効です。
【この記事で分かること】
【要注意】明るい性格になる必要はない。
今回ご紹介する方法は「明るい性格に改造する「コミュニケーション力を獲得する」というものではありません。素の自分(ありのままの自分)を出すことに慣れていく方法になります。
それでは具体的内容について紹介します。
目次
周りからネガティブな評価を受けるのを恐れ「素の自分」「普段の自分」を出せないのです。例えば「本当は自分勝手なだったんだ」「案外面倒な人だね」など思われるのがとても心配です。その心配を回避するために「素の自分」を出さないようになりがちです。
悪い結果になることを怖れるので素の自分を出せません。例えば以下のような事態を恐れます。
【恐れている悪い結果】
このような悪い結果ばかり予測します。そして余計に不安が強くなります。素の自分も出せないのです。素の自分を出す代わりに別の「素じゃない自分」を設定して演じるようになります。
職場、学校、友人関係などで「素じゃない別の自分(別のキャラ)」で生活している方も多いと思います。次第に「素の自分」を出すことが怖くなります。なぜなら当然本来の自分から遠ざかりますし、「素じゃない別の自分」のキャラ設定通り動く必要があります。次第にキャラ設定にがんじがらめになってしまうのです。このような習慣が続いていませんか?
このような習慣を臨床心理学の専門用語で「安全行動」と呼びます。安全行動について解説します。
【安全行動を使うと不安は高止まり】
安全行動は一時しのぎにすぎません。不安は何もしなくても自然に治まります。しかし自然に治まる前に安全行動を使うと一時的に低くなりますが、結局高止まりです。安全行動が不安の高止まり状態を招いています。以上の内容を図解しました。
キャラを演じたら安心は安心ですが、不安は高止まりです。素の自分を出すのが怖いですし不安です。ただ不安は自然に治まります。皆さん、普段の自分でいるときは不安を感じませんよね。それが不安が治まった状態です。安全行動は重要なポイントです。対策の段階で再度詳しく説明します。
以上、3つの要因をお伝えしました。次に具体的な対策を説明します。
まずは「素の自分を出せない」状況とは具体的にどんな場面を明らかにしていきます。どんな場面で困っているのかを明確にすると対策も立てやすくなります。不安階層表というツールを使っていきます。不安階層表について説明します。
【不安階層表】
不安なため「素の自分を出せない」わけです。不安は一定ではなく様々な場面で変化していきます。各場面での不安に点数をつけランキング化したのが不安階層表です。点数は100点満点で、不安が高いほど点数は高くなります。例えばこのような感じです。
【不安階層表を使い方】
この後、行動実験という方法を説明しますがその実験の際に使用します。「素の自分が出せない場面」は様々だと思います。点数が低いところから行動実験をしていき、徐々に点数の高い場面へとチャレンジしていきます。
「素の自分を出せない」ということは「素の自分じゃない行動」を過剰にやっていることになります。この「素の自分じゃない」行動が先ほど説明した安全行動です。「素の自分じゃない行動」を普段やりすぎているので、「素の自分」が相対的に減少しているのです。この状態を図示してみました。
紫の部分である「素の自分じゃない行動」を減らす必要があります。そのため行動をリスト化して明確にしていきます。
【素の自分じゃない行動をリスト化する理由】
「素の自分じゃない行動」をリスト化することで、どの行動を減らせばいいか分かります。リストに掲載されている行動が減れば、自然と緑の部分である素の自分が明確になっていきます。
【素の自分じゃない行動リストの例】
このようにリスト化していきます。これらの行動を減らしていくのが大事です。ここまでの流れを図示すと以下の通りです。
次の段階である行動実験の説明をしていきます。
「素じゃない自分」を減らす手続きについて説明します。行動実験という方法を使用します。行動実験について説明します。
【行動実験とは?】
実際の行動実験ですがこのようなシートを使用します。これを一人で埋めていくのは大変なのでカウンセリングでは、カウンセラーと一緒に記載していきます。
行動実験の記載例をみていきましょう。今回は不安階層表から「職場の上司と一対一で話す」という場面を選んで行動実験をしたとします。職場の上司と一対一で話す場面で、素じゃない自分がしている行動を減らしていくのです。
不安階層表から「職場の上司と一対一で話す」という場面を選び行動実験をしていきます。行動実験する際のポイントを以下に記載します。
【行動実験のポイント】
実際の行動実験の例はこちらです。
行動実験をしたら振り返りをしましょう。実験の振り返り(評価)をしないと次に繋がりません。振り返る際のポイントをお伝えします。
【行動実験 振り返りのポイント】
このように頭の中の予想と実際に起きたことの落差をしっかり振り返るのが大事です。素じゃない自分を減らそうとすると不安が高まります。不安が高まると様々なネガティブな予測が起きるはず。そのネガティブな予測が実際に起きたのか、起きなかったのかを確認する手続きが重要です。実際の振り返りは以下の通りです。
「素じゃない自分」でいることを続けると徐々に苦しくなります。普段の素の自分と落差が大きければ疲弊も高まります。もちろん社会で生きていくときはある程度演じる必要もありますが過剰になってしまえば辛いだけです。今回紹介した方法で徐々に過剰になった状態を改善していくことが大事です。
【参考文献】
最後に宣伝です。kiyokiyo(きよきよ)は、社交不安障害(スピーチ恐怖症・社会不安症・あがり症・対人恐怖症)を専門とした心理カウンセリングルームです。公認心理師・臨床心理士が運営しております。
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この記事の筆者
公認心理師・臨床心理士。社交不安症(障害)の認知行動療法を専門とする。首都圏の精神科病院、カウンセリングルーム、メンタルクリニックにてカウンセリング、復職支援、心理検査等を担当。