公認心理師の藤井です。
社交不安症(社交不安障害)という病名があります。この病名は以前「対人恐怖症」と呼ばれていました。2つの病気は基本的には同じです。対人恐怖症には症状によって呼び名が変わります。視線恐怖症、脇見恐怖症、書痙、会食恐怖症など。ここまでは知っている人は多いのですが、「対人恐怖症でやってはいけないことはなに?」「対人恐怖症克服のためにすることは?」と疑問に思う方も多いと思います。
このブログでは、対人恐怖症(社交不安症)に効果的な認知行動療法をベースに以下の2つの点を説明します。
この記事を読めば「やってはいけないポイント」と「やるべき行動」を知ることが出来ます。
【この記事の読み方】
※忙しい人は安全行動の部分だけ読んでください。安全行動の定義とその典型例は下記の通りです。
【安全行動とは?】
対人恐怖症があると、人と目を合わせることを避けて下を向いてしまうなど、対人不安が生じる場面を避けたり、できるだけ不安を感じないように行動してしまいます。こうした行動を「安全行動」といいます。
【安全行動の典型例】
目次
対人恐怖症にとって安全行動が諸悪の根源です。まずはこの安全行動をやってはいけないのです。
【安全行動をやってはいけない理由】
安全行動は一時しのぎです。一時しのぎのはずが、次第に「安全行動をしたから変に思われないですんだ」「やはりいつも安全行動をしなければいけない」と変わっていきます。結果的に安全行動をやめることができなくなるのです。最終的に安全行動が慢性化していきます。
【安全行動が慢性化する例】
慢性化するとこうなってしまいます。こうなると「普段通りでもいい。安全行動をしなくても大丈夫だ」という経験ができなくなることです。つまり「緊張していない普段通りの自分」を見失ってしまうのです。これが最大の問題です。普段通りに過ごせないなんて本当に嫌なことです。常に対人恐怖に脅えて生活することになります。安全行動は一時しのぎに過ぎません。
対人恐怖症やその他メンタルヘルスの問題で悩んでいる方は病気や自分の状態について過剰に調べすぎる傾向があります。もちろん調べることは大事なのですがいつのまにか調べすぎてしまうのです。結果、睡眠不足にもなります。最初にお伝えしますと対人恐怖症(社交不安症)には認知行動療法が有効です。調べすぎる人はその根拠が気になりますよね。認知行動療法について改めて調べてみました。アメリカ心理学会の12部会(臨床心理学部会)が心理療法に関するエビデンスを出しています。社交不安症のページではこのようになっております。 こちらをお読みください。
英語なんですけども、意訳するとこのような感じです。
社交不安症に限定して言えば、認知行動療法がエビデンスがあるし、効果もしっかり検証されていることになります。ちなみにこのページでは記載はされていませんが薬物療法も有効です。
【調べても行動しないのがまずい】
SNSやネットには様々な情報が溢れています。怖いのは調べすぎて頭でっかちになり、実際の改善や治療に踏み出せないことです。調べすぎて前に進めず知識はあるのになにもしない。「社交不安症のことはかなり知っているけど知っているだけ」という状態になるのがとてもまずいです。
対人恐怖症の人は、対人関係が苦手です。苦手なので、対人関係を「そつなく、スマートに完璧に行動しよう」と考えすぎです。
【対人関係を完璧にしたらまずい理由】
対人関係を完璧にしようとすると下記のような「~してはいけないリスト」を頭の中で思い描きながら生活していることが多いです。
【対人関係で~してはいけないリスト】
「~してはいけないリスト」を頭の中で思い描きながら行動するのはすごくしんどいです。しんどいだけではなく、「やってはいけない。間違えてはいけない」と考えながら行動するわけですから緊張感が強まっているのです。緊張は苦手感や恐怖に変化し、ますます対人恐怖が増強されてしまいます。
まずは安全行動を減らすのが大事です。安全行動は諸悪の根源です。一時しのぎにはなりますが、慢性化してかえって対人恐怖症を悪化させます。た急に減らせばいいわけではありません。減らし方にはコツがあります。
【安全行動を減らすコツ】
【安全行動を減らす際の具体例】
このような感じです。安全行動を一気に減らすのは危険です。諸悪の根源と書きましたが、そうはいっても必要があってやっている行動です。徐々に減らすのが重要なポイントです。ただ「徐々に減らす」といっても一人でやるのは難しいかもしれません。そういう場合はカウンセラーに相談してください。もし相談が出来ない場合は、減らしたい安全行動をリスト化して、減らす難易度が低いところからやってみください。また、気づかないうちにやっている「頭の中で会話や挨拶のリハーサルを繰り返す」も安全行動になります。要注意です。ここの部分を忘れてしまい、安全行動を続けてしまう人もいます。
対人恐怖症(安全行動)について調べるのは程々にしていただけければと思います。SNSやネットの情報は正しいのもあれば、間違っているのもあります。なにより情報量が多すぎてまとまっていません。ただ、そうはいっても気になるし「調べるのは程々にする」とは具体的にどういう事か迷われると思います。例えば大手出版社が出している医師が監修の社交不安症に目を通すくらいで十分です。こちらの本がわかりやすいです。もし、本を読むのが抵抗があるなあという人は、NHKの健康番組がおすすめです。1年に数回社交不安症について取り上げています。
対人関係で完璧にふるまおうとせず、不完全に行動してください。不大事なのは、あなたの心の中にある「~してはいけないリスト」に縛られないことが大事です。リストにこだわらず自由にふるまってみるのです。具体的にはこのような感じです。
【不完全さの具体例】
とはいえ、いきなり試すのは心配ですよね。最初は緊張や不安が低い相手から始めるのがおすすめです。そういう相手と接する時にあえて不完全にふるまってみましょう。ただ、不完全になりすぎで周りを不愉快かつ怒らせては元も子もありません。やりすぎは注意です。
「対人恐怖症を改善したい」という方にお勧めなのがkiyokiyoの改善プログラムです。今回ご紹介した「対人恐怖症にやってほしいこと」を認知行動療法に沿って計画的にしっかりやっていくプログラムです。担当するのは臨床心理士と公認心理師の資格を持ったカウンセラーです。
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対人恐怖症の方にやってほしくないこと、やってほしことをまとめました。大事なポイントは安全行動をしないことです。安全行動はせず、別の行動を試してみてください。またネットサーフィンをしすぎて調べすぎないこと、対人関係でスマートかつ完璧に振る舞おうとしないことも大事です。やり方がわからない方は自己流でやらずに相談してくださいね。
最後に宣伝です。kiyokiyo(きよきよ)は、社交不安障害(スピーチ恐怖症・社会不安症・あがり症・対人恐怖症)を専門とした心理カウンセリングルームです。公認心理師・臨床心理士が運営しております。
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この記事の筆者
公認心理師・臨床心理士。社交不安症(障害)の認知行動療法を専門とする。首都圏の精神科病院、カウンセリングルーム、メンタルクリニックにてカウンセリング、復職支援、心理検査等を担当。